DAY 11:6/10(月) チュニジアvsベルギー(大分)観戦記 ~20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』~

ワールドカップの日本開催の試合のうち、不人気カードといえば筆頭格が6月6日の埼スタでの「カメサウジ」ことカメルーン対サウジアラビア、その次が大分での「チュニベル」ことチュニジア対ベルギーだった。

月曜日の18時キックオフで、今と違いベルギーは欧州勢の中でも地味な位置づけ。
チュニジアは言うまでもなく、日本で知られている選手の方が少ない。

 

6月10日、今日はその不人気カード ナンバー2を観戦するためだけにわざわざ大分へ行く。

どうしてかって?

面白い試合になりそうな予感がしていたからだ。

 

 

この6連戦は全部Nさんと一緒に見に行くので、今日も懲りずに赤羽で合流。

羽田空港に向かい、今回も片道1万円の割引運賃でJASに乗る。

 

大分での試合なので大分空港に行くのが自然だが、今回の旅では往復とも福岡空港発着とした。

理由は、大分での宿泊が軒並み高かったことと、大分空港から大分駅までが不便で時間もお金もかかるのに対し博多⇔大分は「4枚きっぷ」という割引きっぷを使えば片道2,000円程度で特急ソニックに乗れたからだ。

試合後は大分から博多まで臨時列車が増発されるので、これに乗って博多に行けばネットカフェがたくさんある。
そこで夜を明かして翌朝のJAS便で帰京する、というプランだった。

 

せっかくの九州旅行だが、この日はあいにくの雨天。

ソニックは大分県内で別府湾沿いなど景色の良い海に面した区間を走るが、そちら側の指定席を押さえていたのに景色はイマイチだった。

 

15時頃の大分駅前は、お祭りムードはあるもののベルギー人もチュニジア人も少ない。

これまではスタジアムへ向かう前の時点で人の多さに「うおー」となっていたが、この日は逆に「今日ってホントにワールドカップあるの?」という気になるくらいだった。

 

空席もちらほらあるシャトルバスに乗り、大分スタジアム ビッグアイ(現・昭和電工ドーム大分)へ向かう。

大分に来るのは2度目。
前回は2000年10月、1シーズンだけ居たJ2で浦和と大分が激しい2位争いをしていた時のアウェイ直接対決以来だ。

この年のJ2は11チームの構成で、2位までが自動昇格、3位では昇格できなかった。
エメルソン擁する岡田監督の札幌が抜け出し、終盤は石崎監督率いる大分がなかなか負けてくれずに浦和と並走。

「この試合を落としたチームが脱落に近づく」というまさにシーズン最大のデスマッチだった。

 

試合会場は、ビッグアイではなく大分市営陸上競技場。
あのボロい競技場での試合のために列車で往復50時間かけて行ったのだった。
そんな高校2年生の秋。

試合は永井雄一郎、アジエルの鮮やかなターンからのダメ押しゴールで浦和が2-0で勝利。
翌月、最終的にはギリギリのギリギリだったがJ1昇格へ滑り込めたのはやはりこの試合を制していたことが大きかった。

俺のゴール裏でのキャリア全体を振り返っても、忘れられない試合の一つだ。

 

その古い陸上競技場とはまったく違い、大分市街から離れた山奥に立つ大分スタジアム ビッグアイ。

開閉式の屋根を持ち、雨天のこの日は屋根がすでに閉まっている。
これはこれでちょっと楽しみだ。

 

少し早く着きすぎたので、その場のノリで観覧車に乗ることにした。
男二人で。

東九州自動車道がすぐ近くに見える。

 

ビッグアイよりも高い位置にまで来た。

スタジアムの周辺はまだ人影がまばらなようだ。

 

18時キックオフということで、試合終了後はお腹が空きそうだったのでひとまず腹ごしらえをしてからスタジアムへ向かうことにした。




 

今日のチケットは国内販売分でもまずまず余裕で取れたカテゴリー3。

どちら側のスタンドかはチケットが届くまでわからなかったが、南スタンドなのでベルギー側のゴール裏だ。

 

しかも、列の表示が見慣れない。

このスタジアムは下から順にa列、b列とアルファベットで表記されるが、チケットにはアルファベットの小文字が2つ書いてある。

ということは、陸上トラックに向かって敷設される可動席なのか?

席に行ってみたら、なんと可動席の最前列だった。

 

写真のうち深緑色の席が可動席。

本来の固定スタンドは黄色や緑色の座席だ。

 

サッカー専用スタジアムより近いわけではないが、今まで見てきたワールドカップのどの試合よりもピッチが近い。

そして、低くて奥行きは全然わからない(笑)。
今日は試合内容よりも迫力や雰囲気を楽しむ日にしよう。

 

昨夜に日本がロシアに勝ったので、グループHの暫定順位はこうなった。

1位 日本※   4pt +1 3
2位 ロシア※  3pt +1 2
3位 ベルギー  1pt   0 2
4位 チュニジア 0pt  -2 0
(※は2試合消化、他は1試合)

 

今夜の試合でチュニジアが勝つか引き分けになれば、各チーム突破の可能性を残したまま最終戦にもつれ込む

ベルギーが勝てばチュニジアは脱落。
日本目線で言えばドローがベストだろうか。

 

17時過ぎ、ウェーミングアップのために選手が入ってくる。

ドーム型の屋根が閉まっているため歓声の反響が大きい。
これはこれでなかなか良い。

 

これまでの試合と比べれば空席は多いが、ベルギーサポーターの姿はそこそこ見られる。

 

向こうのチュニジア側は、チームカラーが白なのであまりよくわからない。

 

キックオフまで時間があるので、初めて来たスタジアムということもあって散歩してみる。

ゴール裏の最上段からはこのような展望。

 

可動席は陸上トラックの上付近にまで伸びており、メインスタンド寄りのコーナーならこの近さだ。

 

ひととおり歩いたので、席に戻る。

すると、ウォーミングアップの途中で開閉式の屋根が開いた!

こんなことってあるのか!

 

スタンドの中は心なしか明るさが増した。

ベルギーのサポーターはゴール裏のバックスタンド寄り上段、チュニジアのサポーターも向こう側のゴール裏の中段より上に固まっている。

 

この日は空席が目立つかと思いきや、最終的にはかなりの席が埋まった。

月曜の18時キックオフなのに日本人観客はこんなにたくさん見に来ている。
大分在勤の人でさえ定時まで仕事していたら間に合わないキックオフ時刻であるにもかかわらず、だ。

日本人すごい。

 

最初はさほど盛り上がらないんじゃないかと思っていた試合も、キックオフが近づきかなりムードが高まってきた。

楽しみになってきたぞ!




 

選手入場。

ドームは開いたが、それでも大きな屋根に歓声が反響して良い熱気だ。

 

チュニジアは白、ベルギーは赤、ともに1stユニフォームを着用する。

試合が始まってまず感じたのは…
ピッチは近いが試合の模様は全然わからない!

遠近感が掴めないので、選手の動きや歓声の度合いでボールがゴールに近づいたか判断することにする。

GKをやっている時のような気持ちだ。

 

そんな中、早くも先制ゴールが生まれる。

前半13分、向こう側へ攻めるベルギーが右からクロス、それが流れた所を左から折り返し、最後はキャプテン・ヴィルモッツが渾身のスライディングシュート!

日本戦のオーバーヘッドに続き、エースがスキルフルなシュートを決めた。
鮮やかなムービングフットボールでベルギーが先行する。

 

失点したチュニジアも、気落ちするどころかこの日は全開だ。

むしろ失点を機にエンジンがかかり、左サイドからたびたびチャンスを創出。
ガブシがオーバーヘッドで反撃の口火を切る。

 

前半17分、チュニジアがエリア外中央でFKを獲得する。

右足でも左足でも狙いやすい好位置。
俺の席からはベルギーの壁が作られていく過程がGK目線でよくわかる。

キッカーは左右に一人ずつ。
どっちが蹴るんだ?

 

笛が鳴ると、すぐさまこちらから見てゴール右隅へ弾丸のようなシュートが飛んできた。

ブザイエヌの左足から繰り出されたショットは鋭くインにカーブしながら目の前のネットに突き刺さった。

 

なんてシュートだ!

バックスタンド側に向かって歓喜の猛ダッシュをするブザイエヌと、彼を追いかけ回すチュニジアイレブン。

 

こちら側のベルギーサポーターは「これは仕方ない」というリアクションだ。

ファインゴールで試合はすぐにタイスコアに戻った。

 

お互い喧嘩の挨拶みたいなワンパンを見舞い合ったので、前半は活気ある展開が続く。

アジリティで勝るチュニジアがメインスタンド側の右サイドを崩し、FWながら背番号5を付けるジャジリがゴールに迫る。

チュニジアは、他国と比べて強いというほどではないかもしれないが、勢いづかせると強烈だ。
アフリカ予選を勝ち抜いてきたのも頷ける。

対するベルギーも、ホールがゴール右上隅をわずかに外れるシュート。

双方とも前半から飛ばした内容で、追加点はなかったものの満足度の高い前半だった。

 

 

ハーフタイムにベルギーが動く。

9番のFWレスリー・ソンクを投入。
実は前々からカッコよくて好きだった選手だ。

こちら側のゴールに決めてくれたら嬉しい。

 

後半もチュニジアのゴリゴリなオフェンスが続く。

ペナルティエリア外でマイナスの右クロスを受けた10番のゴドバヌが向こう側のゴールへ強烈なダイレクトボレー!

 

うあ入ったコレは!

俺の視点からはそう見えたので立ち上がるところだったが、左に巻きすぎたシュートは枠のギリギリ外へ飛んで行った。

決まっていたら大会屈指のゴラッソだった。

 

ベルギーも反撃。

後半の半ば、右からのクロスにソンクがジャンプ一番!

 

よし来い! 入れ!

すぐそこのゴール前でのアドレナリン全開シーンだったが、なんと味方のヴィルモッツがソンクの前にかぶってしまいミートせず。

せっかくゴール前で2人もドフリーだったのにもったいない!

 

チュニジアは、またもゴドバヌが豪快なミドルを狙うがGK正面。

ベルギーも重戦車タイプのFWムボ・ムペンザを入れて総攻撃に出るが、両チームとも2点目を決めるには至らず。

 

最後まで興奮度の高いハイテンションな一戦は1-1のドローで終わった。

 

いやあ、もともと両チームともそんなに肩入れしてるチームではなかったけど、どちらも前のめりな戦い方で面白かった!

 

不人気カード2番手の試合だったが、客観的な立場としては大満足だった。

4日後のベルギー対ロシアもベルギー側のゴール裏だから余計に楽しみだ。

 

最後に、この日お世話になった可動席最前列のショットを。

結びつけたマフラーは、この頃の俺の大切なアイテム。
いわば、大切な人の身代わりだ。

 

普段、大分でのJリーグでは可動席は使用されない。
ラグビーの日本代表戦では使われていたけれど。

ゆえに、もう大分の可動席で試合を見ることなんて一生ないかもしれない。

この席での観戦はずっと記憶に残り続けるだろう。




 

この結果、グループHの順位は結局変わらずに残り1試合となった。

1位 日本    4pt +1 3
2位 ロシア   3pt +1 2
3位 ベルギー  2pt   0 3
4位 チュニジア 1pt  -2 1

 

4日後の最終戦はチュニジア対日本、ベルギー対ロシアだ。

俺たちは後者に行く。

引き分けかロシアの勝利ならロシアが決勝トーナメント進出、ベルギーが勝てば逆転突破。
わかりやすい決闘だ。

 

どちらにとっても勝ちたい試合で痛み分けに近い結果だったこともあってか、帰り道はお祭りムードは薄い。
シャトルバスで大分駅に戻る車中もどこか淡々とした雰囲気だった。

大分スタジアムでの試合後は渋滞がすごいと取り沙汰されていたが、W杯本番では交通規制を徹底していたのか、意外とスムーズに大分駅へ戻れた。

 

夜だが食べ物を買って帰れる売店もいろいろ開いていたので、車内で食べるものをひととおり買って臨時のソニックに乗り込む。

発車は22時半頃だっただろうか。
深夜1時頃に博多に着くまで、ちょっとした夜行列車ムードを味わえた。

「4枚きっぷ」で指定席を確保してはいたが、車内はガラガラだったのでNさんと向かい合わせにしてしこたま食べる。
外は真っ暗なので、食べるか寝るかのどちらかしかやることがない。

腹いっぱい食べたらどちらからともなく寝はじめ、途中の小倉で進行方向が変わったことにも気づかずに1時頃博多駅へ到着した。

 

さて。
福岡在住の人ならここからタクシーなどで帰宅するのだろうが、我々には朝のJAS便で羽田に帰るまで過ごす場所が必要だ。

最悪ずっと外に居ても困らない時期ではあるが、近くにネットカフェでもないかなと思って探したら、一瞬で「メディアカフェ ポパイ」なるものを発見。

なんだこれ!
初めて見た!

 

面白そうだし看板の見た目的にキレイそうなのでNさんと入ってみる。
中もキレイだ。

ここでそれぞれフラットブースを選んで明け方まで寝ることにした。

その後全国各地に店舗を増やしていくポパイだったが、俺にとってポパイとの出会いはこの博多の夜だった。

 

明日は福岡空港を7時半頃に出る便に乗るので、6時頃には起きる必要がある。

でも、深夜にネットカフェに泊まるというちょっと不良少年っぽい朝の迎え方がなんとなく楽しく感じられた。

 

 

<前回の6月9日分は コチラ

<次回の6月11日分は コチラ

 

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【目次】20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』

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世界66ヶ国を旅し 114試合を海外で観戦した経験、そして16シーズンにわたりJリーグクラブのコアサポをやっていた経験をもとに、海外サッカー・国内サッカー・代表戦などの情報や海外・国内の旅行情報、そしてマイルの貯め方も独自の視点でお届け!
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(この情報は2002年6月時点のもので
す。

 

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