DAY 12:6/11(火) サウジアラビアvsアイルランド(横浜)観戦記 ~20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』~

6月11日(火)。
火曜日は必修の授業が多く、2限から4限まで大学の授業に出たいので9時過ぎには羽田空港に着いておきたい。

そのため、博多駅前のポパイを6時過ぎに出て、福岡空港を7時半頃に出るJAS便に乗った。
片道1万円の割引運賃を使うのも当面はこれが最後だ。

 

予定通り羽田に着き、京急線で品川に向かう。

最初から座れたのでウトウトしかけていたが、途中のどこかの駅、平和島だろうか、俺の右隣の空席に若い女性が座ろうとしてきた。

 

あれ?

この人…、仲根かすみじゃない!?

 

2022年の今では「誰それ?」と思う人も多いかもしれないが、
当時、高3から大学時代にかけて俺が一番好きなグラビアアイドルが仲根かすみだったのだ。

すごく目がキレイで、めっちゃかわいくて大好きだった。

ちなみにそれ以前に好きなグラビアアイドルは井川遥。
そう、今でもキレイなあの人は当時めちゃくちゃかわいいグラビアアイドルだったのだ。

 

なお、仲根かすみはアイドルとしての活動年数はそこまでは長くなく、早稲田大からソフトバンクに入団したピッチャーの和田毅と結婚してしまい引退した。
それ以来俺は和田が大嫌いになったが、今でも現役なのはすごいと思う。

そりゃ、あんなかわいくて性格も良さそうな人が嫁になってくれたら俺だって頑張って野球するもんな、きっと。

 

さて、仲根かすみ本人なのか非常に似ている別の人なのかはわからないが(だとしてもめちゃくちゃかわいい一般人だということになる)、その人はスッと背筋の立った美しい姿勢で文庫本を読みだした。

俺の眠気はすでに吹っ飛んだ。

ここで話しかけたらただの変人だし、どうすることもできない。
できることは、横目でチラチラ右を見ることとバレない程度にクンクン匂いをかぐことだけだ。(犬か)

 

 

そんな悶々とする時間はあっという間に過ぎ、列車は品川に到着。
Nさんとは一旦ここで別れる。

俺らを含めほとんどの乗客は降りるが、仲根かすみは地下鉄浅草線へ直通する列車にそのまま残っていた。

 

最後にもう一度振り返って見てみたが、やっぱり仲根かすみだったんじゃないだろうか。

本人にいつかお会いすることが出来たら、京急線沿線に住んでいたか、一度聞いてみたい。

(敬称略で失礼しました)




 

この日は、昨夜からちゃんと寝ていないので眠くて眠くて仕方がなかったが頑張って4限まで完遂。

20:30キックオフのサウジアラビア対アイルランドの試合に向けて、大学から直接新横浜へ向かう。

 

この日からグループリーグは最終戦となる第3戦に突入した。

東急東横線に乗っている途中、韓国開催のグループAでフランスが敗退したことを知る。
15:30キックオフのデンマーク戦でも0-2で敗れたフランスは、4年前のワールドカップ優勝、2年前のユーロ優勝と黄金期を迎えていたが、6月11日はその時代が終わったことを意味する日となった。

 

一方、20:30同時キックオフとなるグループEは、2試合を終えてこのような順位だ。

1位 ドイツ     4pt +8 9
2位 カメルーン   4pt +1 2
3位 アイルランド  2pt  0 2
4位 サウジアラビア 0pt -9 0

 

今夜はカメルーン対ドイツが静岡で、サウジ対アイルランドが横浜で開催される。

一人負け状態のサウジにアイルランドは必ず勝つ必要があるが、2点差以上での勝利ならカメルーンとドイツがどんな結果になっても2位以上が確定する。
静岡での試合がドロー以外で決着するなら、アイルランドは1点差勝利でもOKだ。

 

菊名で乗り換えて新横浜駅に着くと、カメルーン戦の新潟、ドイツ戦の鹿島のような、いや、それ以上の緑色の大群だ。

信じられない密度の緑色。
これまでで一番多い人数なんじゃないか?

 

特にこのエリアはビールを提供する店舗も多いので、そこらじゅうでアイルランドサポーターが気勢を上げている。

横浜国際総合競技場の前も、すでにこの盛り上がりぶりだ。

 

6日前のドイツ戦を劇的な内容でドローに持ち込んだのが大きいのだろう、今夜サウジに負けるとは微塵も思っていない様子が窺える。

 

この日のチケットも、前夜の「チュニベル」と同様に国内販売分で買ったカテゴリー3だ。

どちら側か選べないが、チケットに書かれていたのは幸いにもアイルランド側のゴール裏となる南スタンドだった。

 

大多数のアイルランドサポーターは試合開始30分前くらいまで外で飲んでいるのでスタンドにいる人はまだ少ないが、幕や旗を見るだけで相当数のアイルランド人が詰めかけそうなことは容易に想像がつく。

 

そして、時間が経過するにつれてそれは現実のものとなった。




 

ウォーミングアップが始まる頃には、7万人を収容するスタンドも徐々に埋まってきた。

 

すでにアイルランド側のゴール裏は、

「Come On You, Boys In Green! Come On You, Boys In Green!」

のチャントでお祭り騒ぎだ。

 

どこから持って来たんだコレは?

てか、入場口の荷物検査でOKしてもらえたのか?

 

横浜国際のスタンドは他会場よりちょっと照明が暗く、距離も遠いので向こう側のゴール裏にサウジサポーターがどれくらいいるのかはわからない。
正直、こちら側の声がうるさすぎて向こうの声はほとんど聞こえない状態だった。

 

今日は丸2時間ずっとこの調子が続くのだろう。

 

アイルランドはこれまでの2試合とほぼ同じメンバー。

一方のサウジは、正直ハイライトを含めて1試合も映像を見ていないのと、名前もアルなんとかばかりで覚えられなかったので、反射神経の鋭いGKアル・デアイエを除いてあまりよくわからっていなかった。
(今のサウジアラビア代表はアルファラジとかアルドサリとか結構好きだけれど)

 

20:30キックオフだと都内からも仕事帰りに足を運びやすいこともあってか、今夜は大入りだ!

この日の観客数は65,320人。
これまでのワールドカップ観戦で最多の観客数の中、選手たちが入場する。

 

両チームともチームカラーは緑色だが、サウジは1stユニフォームが白なのでアイルランドは今日も緑色のユニフォームを着用する。

試合が始まる前の時点ですでに勝利を信じて疑わない大サポーター軍団から、今日も大きな声で国歌斉唱にコールやチャント、そして時折冗談が飛び交う。

 

さあ、緑色に染まった試合のキックオフだ。

 

こういう試合に限って、ずーっと0-0のまま進むと危ないんだよな…

内心はそんな風に危惧していたのだが、そんな気持ちは開始7分で杞憂と化した。

 

キャプテンCBストーントンが後方から右サイド奥へ大きく展開。

バウンドしたボールをダイレクトでギャリー・ケリーが折り返し、ロビー・キーンがダイレクトボレー!

ボールはGKアル・デアイエの手を弾いてゴールへ転がった。

 

幸先よく先制だ!

序盤からアイルランド側のゴール裏は大いに沸く!

 

前半のピンチは一度だけで、それも角度のない所から打たれた決定機とは言いがたいものだったので、アイルランドとしては追加点こそ取れなかったものの難なく前半を乗り切った展開だった。

 

前半は0-1で終了。
スコアこそ1点差だが、後半はもっと加点できそうな雰囲気が漂う。

一方、静岡でのカメルーン対ドイツは0-0で前半終了とのこと。

このまま終わればアイルランドは2位通過だが、あちらが複数得点でのドローだと総得点の争いで不安が残る。
早く2点目を取っておきたいところだ。




 

さあ、後半。

アイルランドは当然2点目を狙う。

 

開始早々、こちら側へ攻めるアイルランドは左サイドのキルベーン⇒ダミアン・ダフ⇒ロビー・キーンと流れるようなパスワークでゴールへ迫る。
わずかに枠をそれたものの、このシュートでゴール裏は俄然「さあ行くぞ!」とムードが高まる。

それがピッチに伝わったのか、後半16分、待望の追加点が生まれた。

 

左サイドからのFK、蹴るのはもちろんイアン・ハート。

彼のプレースキックを次に見られるのは何年か先になるかもしれない。
目を見開いてその姿を焼き付ける。

ハートの左足から放たれたボールの先には、一番目立つ長身FWのクイン…ではなく、彼を囮にして生み出したスペースにうまく回り込んだブリーン!
(まさにゴールインした瞬間)

 

坊主頭の地味なCBが体を投げ出してねじ込んだ技ありの一発は、決勝トーナメント進出に大きく近づく待望の追加点。

この拳たちがその価値の大きさを物語る。

 

こうなればもう、アイルランド側のスタンドはドイツ戦のようなお祭り騒ぎだ!

 

押せ押せのアイルランドはもう止まらない。

右サイドで競り勝ったギャリー・ケリーのクロスに合わせたクインのボレーは枠の左。

その後も、当時まだ粗削りな若手だったダフがサイドをチンチンにする。
まだチェルシーに見つかる前の「原石」だったダフはカメルーンやドイツ相手には持ち味を発揮できたとは言いがたかったが、このレベルでは敵なしだ。

 

途中経過では、どうやらドイツがカメルーンに2-0で勝っているらしい。

それなら、1位になることはないし、2-2に追いつかれない限り2位通過で決まりだ。

 

そして後半43分、スルーパスに抜け出したダフが思い切りの良い左足シュートでダメ押しゴール!

直後にはお辞儀パフォーマンスだ。

 

サウジにはもう力が残っていない。

勝負は決した。

 

勝利を確信するミック・マッカーシー監督のニヤリとした笑みがビジョンに映る。

 

アイルランドサポーターのカラオケ大会なのではないかというくらいの騒ぎっぷりの中、試合は0-3で終了。

この時点でアイルランドのグループE 2位通過が決まった。

 

場内のほとんどを埋め尽くしたといっても過言ではないアイルランドサポーターへ向かい、選手たちが勝利を分かち合う。

 

ラウンド16の対戦相手は強豪スペインになるだろう。
でも、そんなことは関係ない。

今のアイルランドにはもはや無敵の雰囲気が漂う。

 

こちら側に近づいてくる選手たちは、自信満々の表情。
ドイツ戦の劇的ドローで、もう恐れるものがなくなったかのようだ。

返す返すも、あの試合は大きな意味を持つものだった。

 

ドイツ戦に続き、ゴール裏は優勝したかのような騒ぎっぷりだ。

選手たちも、満足そうにこちら側を見ていた。




 

静岡での試合は0-2でドイツが勝ったため、グループEの最終結果は

1位 ドイツ     7pt +10 11
2位 アイルランド  5pt +3    5
————————————————-
3位 カメルーン   4pt -1  2
4位 サウジアラビア 0pt -12   0

となった。

 

ドイツ戦のドローがモノを言ったアイルランドは2位通過、ドイツは立て直してきっちり1位通過だ。
サウジは勝ち点どころか1ゴールも奪えないまま敗退となった。

こうして見ると開幕前の予想に近い順当な結果に終わったが、1日1日中身の濃い試合ばかりだった。

 

ドイツとアイルランドは決勝トーナメントを韓国で戦う。

アイルランドに再会できるとしたら、スペインを破った後の準々決勝だ。
スペインも生で見たいが、アイルランドの試合もぜひまた見たい。

複雑な気持ちだが、やっぱりアイルランドに来てほしい。

 

 

さすがに7万人近く入ると新横浜駅までの混雑は凄まじい。

当時は篠原口(詳細は ⇒ 日産スタジアムから新横浜駅へ混雑を回避して帰る裏ルート♯1/篠原口編  にて)の存在なんて知らなかったので普通の道のりを歩いて人間渋滞にハマってしまった。

 

横浜線も大混雑だったが、ここではアイルランドサポーターが大挙して乗車し、コールやチャントの嵐!

八王子・橋本方面から日常利用で乗っていた人はさぞ驚いたことだろう。

 

疲れたので乗り換えの多い東急経由ではなく東神奈川経由で京浜東北線に乗り続けることにする。
浦和まで時間はかかるがずっと座っていられるのでこの方が良い。

家に着くのは0時過ぎになるだろう。
昨日の今頃は臨時のソニックに乗って大分から博多に向かっていたのだと思うと、随分長い一日だった。

ちゃんとした布団で寝ていないとやはり疲れはこたえる。
試合中が楽しすぎて疲れを忘れていただけに、試合後は余計に疲労感が強まっている気がする。

 

怒涛の6連戦のうち、宮城→大分→横浜と3試合が終わった。

明日は15:30キックオフの宮城での試合。
またしても、旅費を安く済ませるために7時前には大宮を出る新幹線に乗る。

家の布団で寝られるのはせいぜい4時間程度だろう。
ワールドカップ観戦旅行を繰り返していく中で、疲労との戦いという面ではここが最大のヤマ場だ。

 

品川、東京と停車するたび、アイルランドのサポーターの姿は車内から減っていく。

日本で彼らの姿を見るのはこれが最後だろうか。
決勝戦まで勝ち上がれば別だけれど。

そう思うと、たかが3回彼らの試合を観戦しただけなのに急に寂しさに襲われた。

 

事実、アイルランドのサッカーA代表が日本で試合をするのは、このサウジ戦を最後に20年間実現していない。

それでも、競技は異なるものの、2019年ラグビーワールドカップでアイルランドの人たちはまたこの日本へ大挙して来てくれた。

その初戦となる9月22日の、アイルランド対スコットランド。
2002年6月11日と同じこのスタジアムで、そこらじゅうでビールを飲みながら応援を繰り広げる彼らの姿を見て、時代は変わっても大切なものはずっと生き続けるということを教えてもらったような気持ちになった。

 

アイルランドというチームは、サッカーもラグビーも、昔も今も、武骨で愚直だ。

そして、アイルランドの人々もまた、昔も今も、やっぱり最高なのだ。

 

日韓W杯の後、アイルランドという国には2013年に訪れることはできたが、旧ランズダウン・ロード、現在のアヴィヴァ・スタジアムでアイルランド代表の試合を観戦するという目標はまだ達成できていない。

そこでアイルランド代表を彼らと応援できる日を、いつか必ず迎えたいと今でも願っている。

 

 

<前回の6月10日分は コチラ

<次回の6月12日分は コチラ

 

 20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』
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【目次】20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』

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世界66ヶ国を旅し 114試合を海外で観戦した経験、そして16シーズンにわたりJリーグクラブのコアサポをやっていた経験をもとに、海外サッカー・国内サッカー・代表戦などの情報や海外・国内の旅行情報、そしてマイルの貯め方も独自の視点でお届け!
もちろん東京オリンピックも10日間のチケットを当選済みで、ラグビーワールドカップも『チケット入手のコツ』を編み出して日本戦を含め開幕戦から決勝まで13試合を観戦。
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(この情報は2002年6月時点のもので
す。

 

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