DAY 14:6/13(木) エクアドルvsクロアチア(横浜)観戦記 ~20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』~

6月13日(木)。
ワールドカップのグループリーグも残り2日だ。

今日は夕方まで大学で授業に出て、20:30キックオフのエクアドル対クロアチアを見に横浜国際総合競技場へ行く。

大学に行ってからワールドカップの試合に向かうのはこれが最後となる。

 

木曜日は比較的緩い授業が多いので(そういうこと言うな)、大分や宮城へ行ってきたハードスケジュールの後だっただけに多分かなり寝ていたと思う。

メディアでは、明日グループ最終戦を迎える日本代表の話題で持ち切りだ。

 

茨城や大分の試合の際にも感じたが、20:30キックオフの日は試合前にたらふく食べておくことが重要になる。
試合後食料にありつけるのは23時頃になってしまうからだ。

そこで、4限が終わると当時俺の得意技だった「学食のタイムサービス2杯食い」を敢行する。

 

うちの大学の学食はあまり安くなかったが、14:30以降になると日替わりの指定メニューが半額になる「タイムサービス」というシステムがあった。
これを使うと、通常料金で2杯食べられる。

なので、3限が早く終わった時や4限が休講になった時(またはサボった時)はよくこれを利用して2食分食べていたのである。

特に木曜は俺の好きなチキン丼の日だったので、この日は4限の後に2杯食べた。

 

ちなみに、こういう食べ方をしている奴はほとんどいなかったそうなので、俺は1年生にしてほどなく食堂の人たちに顔を覚えてもらっていた。
うちの部活では1年生が「スポンサー集め」をする必要がありそれが歴代の先輩たちにとっては結構な難題だったのだが、俺は容易に学食との「商談」を成功させることができた。

もちろん、部の活動資料の広告に「安い!タイムサービスもおすすめ!」と盛大に謳ったことは言うまでもない。

 

この日はNさんも仕事後にスタジアム入りするため、個別に会場へ向かう。
これまでの試合と比べてちょっと遅い会場入りだ。

2日前のアイルランドの試合と同じ街とは思えないくらい、新横浜駅周辺は普段に近い雰囲気だった。

 

今日のチケットはエクアドルのTST-3 カテゴリー3。
札幌と宮城での試合はエクアドルはビジター扱いだったが、今日はホーム扱いのため、初めて横浜国際総合競技場の北ゴール裏1階席に足を踏み入れた。

入ってみると、指定された席はゴール真裏で、列も結構前の方。
さすがに見づらい。

ピッチへの距離感、角度の薄さとも、申し分のない見づらさだ(笑)。

 

3日前に行った大分の可動席と同様、ピッチの向こう側半分は何が起きているか把握するのは難しい。
大分の時よりピッチへの距離が遠い分、なおさら厳しいと言わざるを得ない。

まあウォーミングアップ以降はそんなにじっくり試合を見るような席ではないので、エクアドル側のゴール裏の雰囲気を味わうことを最優先にして楽しむことにしよう。




 

グループGの順位は、残り1試合でこのような状況だ。

1位 メキシコ   6pt +2 3
2位 イタリア   3pt +1 2
3位 クロアチア  3pt   0 1
4位 エクアドル  0pt -3 1

 

この日の最終戦は、大分でメキシコ対イタリア、横浜でエクアドル対クロアチアがそれぞれ20:30から行われる。

エクアドルの突破条件は厳しい。
辛うじて可能性は残っているが、クロアチアに2点差以上で勝った上でイタリアがメキシコに負けなければならない。

逆にクロアチアは、黒星スタートだったが第2戦のイタリア戦の逆転勝利によって望みが増した。
勝てば高い確率で、引き分けや負けでもイタリアの結果次第では可能性が残る。

 

ウォーミングアップの前に、またもエルナン・ダリオ・ゴメス監督が姿を現す。

エクアドルサポーターからは札幌の時から変わらず、

「ボッリージョォォォーーーーー!」

の大歓声。

 

2敗しようが、ブレない支持。

本大会でどんな結果になろうとも、彼がエクアドルを初めてワールドカップへ導いてくれた英雄であることには変わりない。

 

ウォーミングアップ中に、うちの両親もNさんも到着した。

気づけば今日も、はっきり言って地味な対戦カードであるにかかわらず 確実に6万人以上来ているだろうなという人数でスタンドが埋まっている。
こんなワールドカップ開催国はなかなかないだろう。

 

選手入場。

アンセムが響く中で選手たちが入ってくるこのシーンは、やはり夜だと一層グッとくる。

 

エクアドルは今日も国旗カラー3色の1stユニフォーム、クロアチアは赤白チェッカー模様ではなく青を基調とした2ndユニフォームだ。

 

こちらのゴール裏では、エクアドルの国旗を模したビッグフラッグ。
俺たちの所はその下部にあたる赤いカラーだ。

ピッチに散った選手たちが歓声に応える姿が、しっかりと見えた。

 

ワールドカップならではの対戦カード、そして決勝トーナメント進出を左右する一戦が始まる。

そして、エクアドルはなんとしてもここでワールドカップ初勝利を挙げたい。

 

前半、エクアドルは向こう側のゴールへ、クロアチアはこちら側のゴールへ攻める。

 

戦前の予想通り、決勝トーナメント進出に近いクロアチアの方が攻撃的な色合いが強い。

左サイドでロングボールを受けたラパイッチが肩トラップ→頭→左足ボレーと一度もボールを地面に落とさない衝撃的なシュートをフカして口火を切ると、お次はエリア内でDFを背負ったエースのボクシッチが反転して左足シュート。

これは左ポストに当たって外れた。

 

さらに、エリア内で抜け出したボクシッチが、中途半端に飛び出してしまったGKセバージョスを越えるループシュート!

うわ、終わった!

…とこちら側のゴール裏の誰もが思ったシュートは、ニアへカバーに入ったポロソが間一髪ヘッドで外へ逃れた。

 

たしかにクロアチアは強い。
イタリアに逆転勝ちしただけのことはある。

一方、エクアドルは前半ほぼノーチャンス。

なんとか0-0でしのいだが、後半に失点したら一気にガタガタ崩れる可能性がある厳しい内容だ。

 

ゴール裏の人たちはいつも通り明るさを失ってはいなかったが、多くの人が「3戦全敗での敗退」を覚悟したであろう前半だった。

 

ちなみに、ハーフタイムに入った途中経過では、メキシコがイタリアに1-0でリードという意外な展開。

エクアドルもクロアチアも、「もしかしたら案外いけるかも?」という妙な空気に一瞬なったのだった。




 

後半が始まり、意外にも最初のチャンスを作ったのはこちら側へ攻めるエクアドルだった。

 

バックスタンド側となる右サイドに展開し、メキシコ戦でアシストとなる素晴らしいクロスを上げた右サイドバックのウリセス・デ・ラ・クルスへ。

ゴール前にはエースの「ティン」デルガドが待ち構えるが、メキシコ戦の先制ヘッドのようなシーンを警戒してクロアチアDF陣もマークしている。
それでも彼に託したクロスが飛ぶと、ファーに下がったデルガドはシュートではなく中央後方へ落とすことを選択。

そこに走りこんだ23歳のエディソン・メンデスが左足でダイレクトシュート!

丁寧にゴール右隅へ飛ばしたシュートは、執念が乗り移ったかのようにGKプレティコサの手を弾き、サイドネットへ転がった。

 

メキシコ戦の先制弾のような、いや、それ以上の

「ッッッフオオオオオオオーーー!!!

という狂喜乱舞の声たち。

 

もう近くの人たちとも3試合目だったので、俺も誰彼問わず抱擁を繰り返す。

同じ列だけでなく前の列や後ろの列の人たちも含め、10人、いや、15人ぐらいとハグしただろうか。

 

横を見たらNさんやうちの両親も同じような状態。

みんなして何やってんだ(笑)。

 

このゴールシーンが実質的なファーストチャンスだったにもかかわらず、エクアドルサポーターは「もう1点取れ!」「いけるぞ! 来い!」というテンション。

この感じがやっぱり南米だ。

 

当然、ここからはクロアチアの攻勢が強まった。

エクアドルはDFウルタドを中心に跳ね返す。
そして、中盤の選手たちはイタリア戦とメキシコ戦でW杯に場慣れしたのか、ファールを貰うのが上手くなった。

 

そうなると、こちら側は指笛とブーイングでムードを作る。
エクアドルの選手たちも、急がずゆっくりとリスタートまで時間をかける。

次第に、焦るクロアチア、ファールを受けて時計を進めるエクアドル、という構図になっていった。

 

クロアチアは、後半は打って変わって決定機を作れない。

イタリアには終盤の2発で逆転勝ちした彼らも、「このままだと敗退だ」という焦りからか、淡泊なパスやクロスに終始した。

 

後半ロスタイムに入り、エクアドル側は徐々に勝利を確信してきた。

もう1点取り、イタリアが負けると2位通過となるのだが、イタリアは後半40分に1-1と追いついたらしい。
グループ敗退は仕方ない。しっかり勝ち切ることが今は何よりも大事だ。

 

そして、スペイン語のコールとチャントが続く中、タイムアップの笛。

1-0で試合終了。
エクアドル代表がワールドカップ初勝利を掴んだ瞬間だ!

 

グループリーグ敗退ではあるが、ゴール裏の誰もが歓喜した、誇り高い結果。

初勝利というのは、今後エクアドルが何度ワールドカップに出たとしても、この夜だけのものなのだから。

 

65,000人以上の観客のうち、客観的な立場で見に来た人たちにとってはしょっぱいウノゼロの試合だったかもしれない。

でも、エクアドル側のゴール裏で声を張り上げ続けていた彼らは、きっとこの横浜での一戦のことを一生忘れることはないのだろう。

 

バ~モ~! エクアドリアーーノーー!

 

イタリア戦やメキシコ戦の試合後のような、打ちのめされた表情ではない。

喜びと達成感に満ちた表情が、俺のまわりに広がる。

 

彼らのワールドカップの旅はここで終わるが、スタンドの前へ挨拶に来た選手たちも、それを迎えるサポーターも、「ワールドカップに出て、そこで勝たなければ得られないもの」を掴んだ誇りに満ちていた。

 

「Sí Se Puede! Sí Se Puede!」

の大コールが鳴りやまない。

 

俺たちはできる。

そう、彼らは彼らのやり方で、勝利と、それ以上に大きなものを掴み取ったのだった。




 

第3戦を終えて、グループGの最終結果はこうなった。

1位 メキシコ  7pt +2 4
2位 イタリア  4pt  0 2
—————————————
3位 クロアチア 3pt -1 2
4位 エクアドル 3pt -2 2

 

クロアチアがリードされていたことで終盤はお互い無理せずWin-Winのドローを選んだメキシコとイタリアが突破。
1位通過のメキシコはグループDの2位、2位通過のイタリアはグループDの1位と対戦する。

グループDの最終結果がわかるのは明日夜だが、フィーゴやルイコスタら黄金期メンバーを擁するポルトガルが苦戦しており韓国戦の結果次第では2位通過も敗退もあり得る。
俺個人としても、来週から韓国で4試合見るうちの1試合目はポルトガル対メキシコかイタリアかな?と見込んで「グループD 1位対グループG 2位」というカードを選んでいたので、どのチームが1位通過してイタリアとぶつかるのか、とても気になる展開だ。

 

 

札幌、宮城、横浜とともに過ごしたエクアドルの人たちとは、これでお別れだ。

いつも席が近かったマルセロ、アメリカ在住で親子で見に来ていたおじいさん・おばあさんとその息子さん、名前も知らないがいつも冗談をとばしてくれたおじさんたちと、これまで以上に長いハグを交わした。

もしかしたら、もう一生会うことのない人たちかもしれない。
それでも、この人たちと過ごした日々は、俺の心に永遠に残り続ける。

 

彼らは皆、日本での日々は最高だったと言ってくれた。
日本を大好きになった、と。

あと、「日本はカラオケ代が高い」とも言っていた。

俺も、前から好きだったけど、エクアドルをもっと好きになったよ。またワールドカップに日本とエクアドルが出たら応援に行くからね、と返した。

 

そして、いつか必ず、エクアドルに行こう。
そう、できれば社会人になる前に、学生のうちに。

そう心に誓った。

 

今と違い、世界中の人たちと繋がれるSNSなんて無い時代だった。

だから、この人たちと一緒に過ごせたのはこれが本当に最後になった。

 

それでも俺は、2006年2月、大学を卒業する前に「南米に行くなら今しかない」と決心し、他の友達が東南アジアやヨーロッパを卒業旅行の旅先に選ぶ中、エクアドル~ペルー~アルゼンチンと一人旅をした。

絶対に行きたかったエクアドル。
そこは、多少おっかないエリアもあったしリアル首絞め強盗を目撃したこともあったけれど、基本的にはのんびりしていて良い所で、話す人の誰もが良い人たちだった。

俺が好きになった国に、間違いはなかった。

 

現地で観戦した試合は国内リーグ2試合とコパ・リベルタドーレスのみだったのでエクアドル代表の試合は見ていないが、代表戦の会場となるエスタディオ・アタウアルパには足を運んだ。

 

日韓大会の南米予選の映像、そして、本大会の札幌・宮城・横浜のゴール裏で耳にし続けたあの声。

18歳の自分が聴いてきたあの忘れられない声たちが、アタウアルパの前に立った俺の中でずっとこだましていた。

 

 

<前回の6月12日分は コチラ

<次回の6月14日-16日分は コチラ

 

 20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』
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【目次】20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』

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世界66ヶ国を旅し 114試合を海外で観戦した経験、そして16シーズンにわたりJリーグクラブのコアサポをやっていた経験をもとに、海外サッカー・国内サッカー・代表戦などの情報や海外・国内の旅行情報、そしてマイルの貯め方も独自の視点でお届け!
もちろん東京オリンピックも10日間のチケットを当選済みで、ラグビーワールドカップも『チケット入手のコツ』を編み出して日本戦を含め開幕戦から決勝まで13試合を観戦。
2024年は夏にマイルを使って家族でパリオリンピック観戦旅行を計画中!

ブログに書けない内容は「サカ×マイル」のツイッターでもお伝えしています^^
 @saka_mile_blog


(この情報は2002年6月時点のもので
す。

 

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