DAY 18:6/17(月) 旅は第2章へ。船で韓国へ渡る ~20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』~

6月17日(月)。
いよいよ、日韓ワールドカップ決勝トーナメント観戦に向けた韓国への2週間の旅が始まる。

初めての海外一人旅。

帰国は決勝戦の翌日、7月1日(月)だ。

 

厳密に言うと、前半1週間は大田(テジョン)でのラウンド16や光州(クァンジュ)での準々決勝を観戦する一人旅、そして後半となるソウルでの準決勝と大邱(テグ)での3位決定戦は高校1年生の時から大学まで一緒の親友が合流して二人旅、その後決勝戦の日に大邱で別れてそれぞれ一人で日本へ帰る、という計画だった。

いずれにしても、携帯電話が現地で使えるわけでもないのに友とちゃんと会えるのだろうかという点も含め、未知のことだらけの2週間の旅だ。

 

そう、この旅は、自分の中ではただの海外旅行とは全然違う位置づけだった。

これからきっとたくさん行くであろう海外旅行の、最初の一人旅。
いわば、この旅を機に新しい自分になる、それくらい人生の中で岐路になると捉えていたチャレンジだった。

 

だから、行先は隣国の韓国であるとはいえ、安易に飛行機で往復するようなことはしたくなかった。

山口県の下関を夕方に出るフェリーに乗り、翌朝に韓国の釜山に着く、そのルートで初の単独海外渡航を果たしたかったのだ。

 

今はもうないが、当時は「日韓共同きっぷ」という歴史ある特別企画乗車券があった。
東海道・山陽新幹線で小倉か博多へ行き、下関から関釜フェリーか博多からジェットフォイルに乗って釜山に上陸、その後韓国の特急「セマウル」号でソウルに行くまでの片道ルートがセットになったものだ。

値段は2万円台後半くらいだっただろうか。
飛行機と比べても安くはないが、韓流ブームの前で韓国旅行をする人も今より少なく、それであればロマンある旅程で韓国に向かえるこの方法で行こうと思ったのだ。

もっとも、LCCのない時代だったので航空券も片道2万円くらいかかり、なおかつ仁川→ソウル→大田へ移動する交通費もかかるので、飛行機を使っても「日韓共同きっぷ」を使っても値段は大差なかったと記憶している。

 

ただし、「日韓共同きっぷ」では「フルムーン夫婦グリーンパス」などと同様、新幹線の「のぞみ」には乗れない。
したがって、当時はまだわずかに残っていた博多行きの「ひかり」に合わせる必要があった。(新大阪で乗り換えるのは面倒だったので)

「ひかり」だと、東京から小倉まで5時間半。
こんなに長く新幹線に乗るのは初めてだ。

ちなみに、東京から博多までぶっ通しで走る「ひかり」は、当時全車指定席だった「のぞみ」の自由席新設と増発によって翌年に消滅した。

 

というわけで、夜行フェリーに乗るからといってあまりゆっくり向かうわけにもいかず、昼前の「ひかり」に乗るべく午前中に浦和の実家を出発した。

荷物は、2週間分の荷物や4試合のチケット、泊まる宿の予約控えや地図を印刷したファイルなどを入れたバックパックと、手近な荷物を入れる用の折り畳める肩掛けカバンのみだ。

 

家から2週間も離れるのもこれが初めてのこと。

自分はそうならないと思っていたが、それでも少しは寂しさと不安が胸を去来する中で駅へ向かった。

 

「日韓共同きっぷ」は自動改札を通れる磁気券ではなく紙のきっぷなので、有人改札を通る。

特別な旅がまさに今始まった。

そんな実感が湧く。




 

東京駅に着いたら、博多行きの「ひかり」へ乗り換えだ。

列車も座席も指定されていたので、乗り遅れるわけにはいかない。
そのため早めに東京駅に着いてしまったので、これから5時間以上車外に出られないしということで弁当やお菓子を多めに買った。

お菓子が余ったら韓国での間食にとっておけばいいだろう。

 

博多行きの「ひかり」が入線し、進行方向右の窓側の席に座る。

10日前にもスウェーデン対ナイジェリアを観戦するために乗ったばかりの東海道新幹線だったが、その時の目的地は神戸、今回の目的地は韓国の大田だ。
車窓の景色もまったく違うものに思えた。

晴れれば富士山が見える側だが、晴れと曇りの間のような天気だったので富士山は見えず。
ボーっとしたりウトウトしていると、新幹線は京都や新大阪に着いた。

 

まだ乗車時間は半分ある。
はっきり言って、新幹線に乗り続けるのは暇だ。

山陽新幹線に入るとトンネルが増えるので、退屈さはさらに増す。

買った弁当を食べ、再びウトウトする。
中国地方に入ると晴天になった。

 

食後の眠気と、晴天の景色、トンネルの闇、晴天の景色、トンネルの闇…その繰り返しの中で眠りに入るのが心地良かったことを覚えている。

目が覚めると、「ひかり」は山口県内を走っていた。
東京で乗り込んでから5時間半、16時過ぎに小倉に到着。

こちらは曇り空だ。

 

ここからは九州から本州へ少し戻るような形で、普通列車に乗り下関へ行く。
学校帰りの高校生たちと一緒になった。

 

「3ヶ月前は俺って“こっち側”にいたんだっけ?」

と不思議な気持ちになる。

平日に2週間分の荷物を詰めたバックパックを背負っていると、高校生の彼らと自分がまるで違うもののように思えた。

 

下関駅付近のお店で今夜と翌朝の食料や飲み物などを買い、下関港の国際フェリーターミナルへ歩く。
10分足らずで着く近さだ。

本州の先端であることを印象づける海の香りがする。

 

ターミナルに入り、「日韓共同きっぷ」やパスポートを提示すればあっさりと乗船手続きは完了。

本当にこれで外国へ行くのだろうか。
あまり実感が湧かない。

 

出港は18:30頃だっただろうか。
その随分前から乗船開始となった。

国際便だけあって、予想より大きな船体だった。

こうした船に乗るのは、新潟から佐渡に行った時の客船と函館から大間に行った時の客船だけだったので、新鮮な楽しさを感じる。

 

「日韓共同きっぷ」で乗れるのは2等客室なので、カーペット敷きの雑魚寝スタイルだ。
火曜日だけあって、かなり空いていた。

2等は、日本人と韓国人が半々くらいだっただろうか。
誰からともなく、なんとなく等間隔になるよう空間をあけて座ったり寝転んだりしていた。

一応盗難防止のワイヤーは持ってきたので、それを使ってバックパックとパイプをくくりつけ、小型の肩掛けバッグだけ持って甲板に出た。
せっかくの船旅なので、出港してしばらくするまでは外で景色を見ていようと思ったのだ。

 

出港の時刻が近づく。

そんな時に、ガラケーにメールが来た。
部活の同期の女の子からだった。

多分、多分だが、俺はこの頃、部内の女子2人におそらく好かれていた。
そのうちの一人がこの子で、部活以外の内容も含めて日常的にメールをしていた。

こちらとしては好きでも嫌いでもなく普通に同期として接していたが、好意を持たれても根本的に俺とこの子では合わないだろうなと感じていたので俺はあえて少し淡白な接し方をしていた。

それでも、こういうタイミングでメールをくれたのはちょっと嬉しかった。
現に、20年経った今でもそのことは覚えているわけだし。

 

ちなみにその子は、その後の夏、俺の高校時代からの友達と付き合い始めた。
それはそれであまり良い気分ではなかったし、この組み合わせじゃすぐ別れるんじゃないか?と思ったが、案の定3ヶ月か4ヶ月で別れたようだった。

一応どちらともわりかし仲が良かった俺としては、その頃ちょっと気まずくなったことは言うまでもない。

誰にでも多かれ少なかれあるであろう、青春時代ならではの出来事だ。




 

ボーーッ!

 

そんな気持ちを断ち切るかのように、汽笛が鳴る。
出港だ。

船がゆっくりと動き、港が少しづつ遠ざかる。

 

手すりに寄りかかり、だんだん小さくなっていく下関の街と、関門海峡をしばらくの間眺めていた。

 

もう、戻れない。
ここからは、何が起きても一人でやっていくしかない。

心細さと、やってやるぞという気持ちが胸の中で半分に分かれた。

 

国際ローミングサービスなんて便利なものはない時代だったので、今と違って携帯電話は韓国では使えない。

メールだって、ごく稀に日本語入力ができるキーボードがあるPCバン(日本でいうネットカフェ)なら可能なようだが試合観戦に訪れる大田や光州では日本語のメールを送ることなんて無理だろう。

クレジットカードだって、一応学生でも使えるものを大学生になってすぐ作ったが、何かトラブルで使えなくなったらシャレにならない。

今の海外渡航とは、必要になる「覚悟」が段違いだった。

 

肩掛けバッグに入れていたMDプレーヤーを取り出す。

なんとなく、音楽でも聴いていなければ心が不安な方に傾いてしまいそうな自分がいた。
強がっていても、生意気なこと言ってても、所詮18歳なんてそんなものだ。

 

そんな心が欲していたのは、スピッツの「夢追い虫」という歌。

曲を選び、再生ボタンを押した。

高校時代、OASISやStereophonics、MR.BIGなどイギリスとアメリカのロックバンドばかり聴いていた俺にとって、ただ二つの例外としてよく聴いていた日本のバンドがスピッツとThe Kaleidoscopeというバンドだった。

スピッツもルーツはパンクバンドなのだから、根っこは通じるものがある。
実際、世間のイメージと違って速い曲も結構あるし。

 

この曲は、特にヒット曲でもなく、そこまで有名な歌でもなく、その後発売された時代ごとに区切られたベスト盤になんとか入るぐらいの存在だったが、この歌のメッセージ性が好きだった。

 

夢で見たあの場所に立つ日まで その日まで
僕らは少しずつ進む あくまでも

 

この旅は、ワールドカップという夢そのものであると同時に、その先にある、ヨーロッパや南米など世界中を旅しながらサッカーを見に行くという夢の序章でもあった。

その場所に立つ日まで進む、俺だけのストーリー。

この歌を聴きながら、暗くなっていく空と船の後ろの海へ描かれていく波の軌跡をずっと見ていたら、なぜか涙があふれて止まらなかった。

 

今でも、なぜあんな誰もいない所で泣きじゃくっていたのかはよくわからないが、しばらくしてそのおかげで気持ちが吹っ切れたのも確かだった。

 

ひと泣きしたら、ある意味、もう失うものはないという気持ちになった。

あとはそう、やるだけだ。




 

空がほとんど黒色になったので、甲板から船内に戻った。

下関で弁当を買っていたが、船内の食堂が営業していたので今夜はそこで食べてから寝よう。
弁当は明日の朝に食べればいい。

食堂では、焼肉定食みたいなものを食べた気がする。
やがて、テレビでは20:30キックオフのブラジル対ベルギーの中継が始まった。

 

つい3日前に見たベルギーが、10日前に行った神戸ウイングスタジアムで試合をしている。

それを海の上で見ているというのは不思議な感覚だった。
まさに非日常だ。

 

食べ終わったら眠くなってきたので、食堂を出て船内の風呂に入ることにする。
風呂から上がって食堂のテレビを遠目で見たら、ブラジルが2-0でリードしていた。

2等船室に戻り、ゴロンと横たわる。
外はもう真っ暗なので、やることも特にない。

釜山に着くまでのんびり寝っ転がっていよう。

 

釜山港に着くのは、明日の朝8時だ。

そこから、きっと新しい日々が待っているのだろう。

いつの間にか、不安はもう消えていた。

 

 

<前回の6月14日ー16日分は コチラ

<次回の6月18日分は コチラ

 

 20周年記念 2002日韓ワールドカップ観戦記『魂の記憶』
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(この情報は2002年6月時点のもので
す。

 

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