せっかくなら2部リーグも観戦しよう!#5 イスラエル編【後編】

これまで イタリア編フランス編トルコ編ポルトガル編 をお届けしてきた『2部リーグ観戦記』シリーズ。

第5弾・イスラエル編【前編】 に続き、2012年に私が2試合を観戦した際のエピソードを後編として写真とともにお伝えします!

 

今回のお話の中心となるのは、私の凡ミスによって引き起こされた、2名のイスラエル人男性との出会い。

単にサッカーの話というだけでなく、この国に身を置く人々にとって切っても切れないパレスチナとの紛争問題が市民レベルでは日常的にどう感じられているのか、ということなどもたくさん思い知る機会となりました。

もしかしたら、イスラエルという国、イスラエル人という国民、あるいはユダヤ人といった民族の印象が変わるきっかけになるかもしれませんし、私自身、この旅で最も印象的だったのはこの夜の出来事でした。

イスラエルに行かなければ実感することのなかった、まさにそこにある日常的な出来事たち。
ぜひご覧頂ければと思っています^-^

 

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翌日も、エルサレム日帰りのあとに同じスタジアムへ

【前編】 で観戦した試合の翌朝。

この日も試合は夜だったので、早めに起床して早めに行動することにしました。

 

宿では、前夜に行われたカップ戦の試合の詳報が新聞に載っています。
(もちろんヘブライ語なんて難しすぎてわかりませんが)

 

 

まずは、テルアビブのバスターミナルから格安の乗り合いバンに乗ってイスラム教の聖地・エルサレムへ向かいます。

こうした交通事情はトルコみたいですね。
1時間くらい乗って300円程度だったと思います。

 

エルサレムに付くと、明らかに他の都市とは全く違う雰囲気。

本や聖書に載っているような場所をたどっているとあっという間に時間が過ぎていきました。

 

 

いわゆる、パレスチナ側にも行ってみました。

 

ここには写真を載せませんが、綺麗な家や高層マンションも建っているイスラエル側とは明らかに違う、一般市民が水回りの悪そうな日陰の住居で暮らしている一帯を通ったりもして、声にならないような思いに胸を突かれました。

エルサレムは一度行ってみてほしい場所。
奥に行けば行くほど、ガイドブックではわからない「綺麗事ではない部分」も目の当たりにすることになりますが、それも含めて世界でここにしかない空気が充満している都市なので、きっと強く印象に残るひとときになると思います。

 

 

さて、夜までにはテルアビブに戻っていたいので、後ろ髪を引かれながらも16時頃にエルサレムを出発します。
帰りも1時間ほどでテルアビブのバスターミナルへ。

雰囲気は薄暗くてこんな感じですが、結構機能的なつくりになっていて、スキマ時間で何か食べたり飲んだりするのには困らない場所でした。

 

あとですね、イスラエルは温暖な地域だけあってフルーツが豊富!

見たことのない果物やフルーツジュースもたくさん売っているので、珍しいフルーツを味わってみたい人はきっと楽しめるんじゃないかと思います^^
中にはものすごく臭いのもありましたが(笑)。





テルアビブに戻り。再びスタジアムへ

この日も試合会場はウィンター・スタジアム。

というより、このスタジアムは本当は今夜出場する「ハコアー・ラマット・ガン」(Hakoah Ramat Gan)のホームのようで、前夜のハポエル・ラマット・ガンは臨時で借りていただけみたいだったのです。

たしかに、「席や壁が紫色なのに赤いチームがホームなのは変だなぁ」と思っていたのですが、ハポエル・ラマット・ガンはラマット・ガン・スタジアムが本来のホームとのこと。

ということで、この日の試合はハコアー・ラマット・ガン対マッカビ・ベエルシェヴァ(Maccabi BE’ER SHEVA)の2部クラブ同士の対戦にいってみましょう。

 

前夜と同じくらいのキックオフ40分頃に着くようにウィンター・スタジアムへ。

バスを降りると、あれ? 明らかに昨日の賑わいとは違います。
スタジアムの外は人影がまばらで、「本当に試合あるの?」という雰囲気。

 

 

かろうじて、中で選手たちがウォーミングアップしている物音と当日券売り場の明かりで試合開催を感じ取ることができましたが、前日とはまるで違う場所にいるような感覚です。そ

そんなわけで、チケット売り場に並んでいる人もいないので、一人でチケットを買いに行きます。
昨日は並んだ売り場ごとに販売席種が決まっていたので(といってもメインスタンドかバックスタンドかだけですが)お金を出すだけでチケットを貰えましたが、今日はヘブライ語と数字が書かれた紙に沿って選択肢がある模様。

よくわからないので一番安い券種を指さして、200円くらい払ってチケットを受け取りました。

 

チケットを持って昨日と同じバックスタンドの入場口へ向かいます。
で、同じく昨日のように入口のおっさんにチケットを見せると、

「おい、お前ここじゃないぞ」

と止められるではありませんか。

 

えっ?なんで?

と思ってどこに行くのかジェスチャーで尋ねたら、おっさんは「あっちだ」と、真っ暗で人の気配がない入口を指します。

 

ホントに真っ暗でお化けでも出そうな入口なんですが、言われた通りそこに行くと、厳重な服装をした警官が二人いて、

「お前?ここなの?マジで? …ホントにここ?」

みたいな感じで尋ねてきます。

 

当然こちらはヘブライ語なんて何言ってるかわかりませんから、

「ん? え? ダメなの?」

みたいなやり取りになり、
そのうち一人が「イングリッシュ、オーケー?」と英語で聞いてきました。

 

それなら多少わかるので英語でのやり取りに切り替えたところ、なんとこの入口はアウェイサポーター用の席とのこと。
だからお前のことは頭から靴までチェックしないといけない、まあでも誰も来ないから、三人でゆっくりやろうぜみたいなことを言われます。

 

 

坊主頭の方が英語を喋れる人。
アンダーアーマーの帽子をかぶっている人は英語を話せないので、坊主経由で私に話しかけてきます。

 

ボディーチェックを終えて客席に入ると…見事に誰もいません。
幕もなし。

ただアウェイチームのメンバーがフィールド半分でウォーミングアップをしているという、不思議な光景が続きます。

 

 

結局そのままビジタースタンドには誰も来ることなく(なんだそれ!)、キックオフを迎えることになりました。

 

 

バックスタンド同士なのであまり見えませんが紫色を基調とするホームチームのサポーターも数百人くらいいるような気配です。

 

 

前日で観戦した試合よりもさらに強い“ローカル感”の中、試合が始まりました。





「日本のみんなに伝えてくれないか」

前半が始まり、しばらく一人で試合を見ていたのですが、ほどなくして後ろからギーッという重い音が。

どうやら、さっきの警官二人がスタンド入口の扉を閉めたようです。

イタリアなどでも、キックオフ数分後には扉を閉めて入れないようにすることはよくあるんですよね。
昔、2005年にイタリアのパルマでチケット完売のプレーアウト(残留/降格決定戦)を観に行った時に、高騰していたダフ屋のチケット価格がキックオフを境に定価割れしたので前半3分頃に買ってシャッターが下りてくる所を滑り込みながら入場したこともありました(^^;

 

で、いつ間にか警官二人が私の横に座って休憩を開始。
サンドイッチを食べながら何やら喋っていましたが、そのうち坊主頭の方が私に柿とリンゴを渡してきました。

「えっ!? いいの?」と思いましたが(日本では普通そんな場面ありませんからね)、ありがたく頂戴することにして、男3人でモシャモシャ食べながら試合を見ます。

 

 

それを機に、英語を喋れる坊主頭を経由しながら二人との会話が始まりました。

何歳なんだ?
仕事は何してるんだ?
何しにイスラエルに来たんだ?
(「サッカー観に来たんだ、3日前にはエジプトで試合観て、昨日もここで観戦したし」と答えたら爆笑していました)

イスラエルではどこに行った?
エルサレムにはいろんな外国人旅行者が行くけど、ハイファとか北の方もいいぞ。
意外といい国だろ、フフフ。
イスラエルに行くって言って誰も反対しなかったのか? 日本でも「イスラエルは自爆テロが多くて危ない」って思われてるんだろ?

というような感じで話題が広がっていきます。

 

テロに関する話が来たので、

「俺さ、2004年にイスタンブールでテロがあったすぐ後にトルコ旅行した時も全然平気だったから別に危ないなんて思ってなかったよ」
と私が答えると、

「世界じゃ『イスラエルではしょっちゅう自爆テロが起こってる』みたいな報道をされてる。」

「でもな、テロなんてめったにないんだよ。俺だって近くでテロが起きた時なんてないし、俺のまわりの誰かが巻き込まれたことだって一度もない」

「交通事故に遭う可能性の方がずっと高いはずなのに、イスラエルでは何千人もテロの犠牲になっているみたいな印象を世界中に持たれている」

 

二人の話はどんどん深い方に向かっていきます。

 

「俺たちイスラエル人は、何かしたか?自分たちの土地を守ってきただけじゃないか」

「もともと先祖の代からイスラエルにいた人に加えて、ヨーロッパからここしかなくて流れ着いた人たちだって大勢いる。
乾燥して、作物もそう容易に育たないこの土地にだ」

 

そして、坊主頭は言いました。

 

「日本でイスラエルについて語る機会があったら、ぜひ日本のみんなに伝えてくれないか」と。

 

「イスラエル人はずっとこの土地を大事にしてきた。俺たちには砂漠とアラブ諸国に囲まれたこの土地しかなかったんだ。
パレスチナ人やアラブ人が憎くて殺し合ってきたわけじゃない。俺たちの土地を奪われたくなくて、代々イスラエル人は対抗してきた。
イギリスから独立しても、常に領土問題でイザコザが続いてきた。
でも、みんなで寄ってたかってイスラエルの土地を奪わなくたっていいじゃないか。
アラブ人にはアラビア半島がある。アフリカ北部にもチュニジア・エジプトからモロッコまで広い領土がある。
ナイジェリアとかだってイスラム教だろ?
4億人いたってそれだけ広い土地を既に持ってるんだから十分じゃないか。

じゃあイスラエルはどうだ?
500万人いるイスラエル人に与えられたのは、たったの、たったこれっぽっちの国土だけだ。
それでも『パレスチナによこせ』『イスラエルの泥棒野郎』って世界中が言ってくる。
巨大な象のイスラエルが小さな蟻んこのパレスチナを踏み潰そうとしてる、そんな言われ方もされてきた。
でも、俺たちからすれば、アラブ諸国の方がずっと巨大でイスラエルに脅威を与え続けてるじゃないか。
問題の本質は『イスラエル・アゲインスト・パレスチナ』ではなくて、『アラビック・アゲインスト・イスラエル』なんだよ。

…あれ、ケガしてる選手いるぞ」

 

試合を見ながらではありますが、イスラエルで生きてきた彼らからそんな話を聞いた時間はとてつもなく濃密なものでした。

 

私はイスラエル情勢やパレスチナ紛争に詳しいわけでもないので、どっちが良いとか悪いとか、どっちが正しくてどっちが間違っているとか、そういうことはわかりませんが、日本でたまにイスラエルのことが報道されるのはたしかにテロとか和平交渉決裂とか物騒な話題ばかり。
ドンパチやってる映像やバリケードが張られているシーンを見ることもありましたし、この時に身を置いていたイスラエルの地の終日穏やかな空気とはまるで違うものだったんですよね。

 

上述のように、この旅ではいわゆるパレスチナの領土にも足を踏み入れ、イスラエル人との生活水準の差に言葉を失ったこともありました。
エルサレムの郊外にも、イスラエル側とパレスチナ側が「分離壁」という大きな壁で隔てられている所が。
壁の手前のイスラエル側にはマンションが並び、壁の奥のパレスチナ側には古びた家屋とパンクしそうなオンボロトラック。
その光景を見ただけでもイスラエルとパレスチナには決して対等ではない大きな格差が存在することを実感しました。

 

そのため、パレスチナ人と話したらイスラエル人の警官二人とはきっとまた違う話になるでしょうし、その正当性や合理性は私の乏しい知識ではわかりません。

ただ、ひとつだけ言えるのは、その地を訪れて、自分で目にした光景、自分で耳にした声からでしか感じられないものがあるということ。
それが旅の醍醐味だとするなら、イスラエルを訪れたこの時ほどそのインパクトが強かった旅はそうそうなかったかもしれません。

…と、ちょっとサッカーから離れた内容を書きすぎてしまったので、試合の方に戻りましょう(^^;

 

 

ビジター席から中央寄りのスタンドを除くと、ここがVIP席っぽい所。

 

 

スポンサーの看板がまったく見覚えなくて新鮮ですね。

 

 

ああ、ボールパーソンの少年(多分ユースかジュニアユースの子)が試合そっちのけで携帯で長電話をし始めてしまいました。

 

 

後半10分頃、ついにアウェイチームが、俺たちのマッカビ・ベエルシェヴァが先制!!

 

 

点とった奴がセンターサークルから離れず(この状態だとルール上、キックオフできない)ブーイングを浴びます。

Jリーグではお目にかかれない露骨な遅延行為を見られるのも海外サッカー観戦の醍醐味の一つですね(笑)。

 

 

実はこのアウェイチーム、ずっと気になっていた人が一人いまして…。

このジーンズ姿のおっさん。

 

 

ベンチに座っているのにコーチみたいに指示もしないし、通訳でもなさそうだし、そんな服装で何してるんだろ?と思っていたら…

なんと、チームドクターだったんです!

選手が倒れるシーンがあると、ジーンズ姿でその選手のもとへダッシュ!

治療し、選手を引っ張り上げて起こすところまでしっかりとそのお仕事ぶりを拝見しました。

 

 

チームドクターがジーンズ姿というラフっぷりも、Jリーグでは考えられないというか、他の国でもなかなかない光景なので驚きました(笑)。

 

ちなみに試合の方は、2点のリードを守り切った俺達のマッカビ・ベエル・シェヴァが1-2で勝利!

 

 

試合後に選手たちが私一人のアウェイスタンドに向かって頭上で拍手してくれ、私もそれに応えて大きく拍手したのが良い思い出です^-^

 

最後に、スタンドをあとにする前に警官二人とスリーショットを。

 

 

警官二人と話した内容が強烈すぎて試合内容はあまり頭に入ってきませんでしたが、2部ならではの、そしてイスラエルならではの現地観戦経験として、この日のことは10年近く経過した今でも強く記憶に残っています。





まとめ:「この国でなければ感じられないこと」がたくさんあるイスラエル。行ってみたくなった人はぜひ!

以上、今回は『せっかくなら2部リーグを観に行こう』シリーズの第5弾として、イスラエルの2部クラブのゲームに2試合行った際の観戦記の後編をお届けしてまいりました。

 

入国ルートが限られるので日本からそう簡単に行ける旅先ではありませんが、実際に行ってみると不便なことはあまりなく、十分に旅先として楽しめる国でした。
(ヘブライ語は最初から最後まで全くわかりませんでしたが…)

ヨーロッパの中では南方にあるので、真冬でも日本より暖かいくらいだったことも好ポイントですね!

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海外旅行に行けるようになったら旅先の候補地に加えてみてはいかがでしょうか^^

 

次回のこのシリーズは、南米、「危険だ」と忠告された場所に踏み込んだアルゼンチン2部リーグの2試合について書いていこうと思います。
その次はセルビア編とかも書きたいですね^^
お楽しみに!

 

 世界66ヶ国を旅し 114試合を海外で観戦した経験、そして16シーズンにわたりJリーグクラブのコアサポをやっていた経験をもとに、海外サッカー・国内サッカー・代表戦などの情報や海外・国内の旅行情報、そしてマイルの貯め方も独自の視点でお届け!
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(この記事の情報は2012年1月の訪問時のものとなります。)

 


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